英語の教則を活用しよう

とりあえず何を書いて良いやら本人も分かっていない、この閑話休題のコーナー。
コラム風に何か書いていくにはサイトのテーマがマニアック過ぎて無理に幅を広げるのもどうかといった感じです。
まあ、せっかくのコレクションを活かさない手はないという事で、メインコンテンツは教則マニアの部屋で行こうかなと思っています。

この教則マニアの部屋を開設するにあたって、一つ悩んだ点がありました。
それは英語の教則本とか教則DVDを紹介するかしないかです。

ジャズ系統は特にそうですが、洋書の教則の方が段違いに内容が充実しています。
ですが、そんなに売れるものでもないのでしょう、翻訳本がそう次々と出るものではありません。(最近はATNが頑張ってはくれていますが、それでも限度があります。)なので、結局は原書のままで読んでしまった方が良いと思うのです。翻訳本は非常に高いので財布にも優しくないですから。

Amazonのおかげで最近は洋書のマニアックな物も結構気楽に手に入れられます。非常に便利な世の中になりました。ですが、知り合いに勧めてもほとんどが英語というだけで手に取る事なく終わってしまうのが非常に残念です。こんな事言いつつ、私も25歳位までは英語の書籍を読むなんて出来る訳がないと思っていました。(私の場合はブルーグラスの奏法に興味があったのですが、日本語では情報がほぼ皆無に等しかったおかげ読む気になれたんですが。)

「そうは言われても英語なんかできないよ」と言う人も多いと思います。
ちょっと待って下さい。別に10年がかりで英語の達人になろうなんて言っている訳ではないんです。音楽の情報を手に入れるためであって、英語の習得がメインの目標でないのならそれは本末転倒ですよね?実はただ教則を読めるようになりたいだけなら、必要な英語の能力はさほど時間をかけずに得る事ができます。中には英語はダメだと言いつつも既にそのレベルの能力を習得している人もいるかもしれません。 このページでは「最低限の努力で使える英語」をテーマに、ちょっと実用的な英語の勉強について触れておきたいと思います。

ただ聞いていても英語は分からない

書店のベストセラーコーナーに行くと、英語のHowTo物でひたすら聞いているだけで英語が身に付くなんて本が大抵一冊はランクインしています。本当に英語はただひたすら聞いていれば身に付くのでしょうか?

答えはNoだと断言出来ます。
なぜなら私はこういう甘言に踊らされて1本の英語のCDを300回も聞いた事のある馬鹿だからです・・・。

高校生ぐらいの頃でしょうか。漠然と英語できるようになりたいと思っていた私ですが、もちろん真面目な英語の勉強なんて面倒なのでしたくない訳です。本屋で安易な事を言うHowTo本を鵜呑みにして、聞くだけでマスターできるんなら良いよなと考えました。幸い私立で通学片道1時間だったので、学校の行き帰りにひたすら1本の英語のCDを執拗に聞いていました。

結論を言うと、意味が分からないところはほとんど分からないまんまで音声だけはハイレベルで聴き取れるようになります。
これが実に不思議ですが、100回ぐらい聞くと急に言葉の音声が明瞭になって恐い位に聴き取れるようになります。この急に聴き取れる現象のおかげでその後のバカバカしい回数も聞けてしまった訳です。おかげで大学のリスニング/スピーキングのクラスは非常に楽だったですが・・・。

という事である一面では英語力の向上に役には立つんですが、こんな事をしていてはこのページの目標、「最低限の努力で使える英語」とは真逆になってしまうのでとりあえずはやめておきましょう。

英文法ができれば英語は読めます

なんだか楽しては英語は使えるようにならないようなイヤな出だしになりましたが、ここからある意味さらにイヤな話になります。
つまるところ、英語を理解するためにはまともに勉強した方が賢明です。一つのやり方としてはひたすら英文と単語を暗唱するやり方がありますが、これでは非常に時間がかかってしまいます。 ならばどうすればよいでしょうか。

答えは「英文法を勉強する」です。

この英文法という単語を聞いた時点で、ああ結局すんげえ勉強しなきゃいけないんだ、やーめたと思った方。
英文法なんて学校でさんざんやらされたけど英語なんてできるようになってねえよ、この野郎と思った方。
色々と文句を言いたくなる気持ちは分かりますが、ちょっと考えてみましょう。

まず英文法はどれだけ学習が必要かという事ですが、死にもの狂いでやれば3ヶ月でほとんど終わります。
信じられないかもしれませんが本当の事です。だって文法書なんてたかだか2、3冊きっちりやればそれで終わりですよ。
はっきり言って私も文法の勉強なんてこれっぽっちも楽しいとは思いませんが、苦しくても結果が伴うなら得られる対価は十分過ぎるほど大きいと思うのです。

次に学校でさんざんやったという方。本当にやったのならば一般的な英語の文章はとっくに読めるはずです。
もちろん分からない単語は辞書を引く事になりますが、引いた単語に意味が沢山書いてあったところでどの意味/用法で使っているのか分からないという事はあんまりないはずです。 もし、すでに辞書をさっと引いただけで9割以上の文章は明瞭に理解出来るなら、本当に学校でやった英文法が身に付いているという事です。
英文に対する漠然とした不安感があるかもしれませんが、是非英語の教則本に勇気を持ってチャレンジしてみましょう。

もし単語の意味が分かるのに文章の意味が分からないなんて現象が起こっているならば、確実に英文法は習得できていません。
無駄な言い訳はやめて苦痛な英文法の勉強をしましょう。

勉強にあたってはただ読むよりかは、問題集付きでやるか暗記項目が明瞭になっているものがお勧めです。
少なくとも私はこんなクソつまらん物は問題解くか反復して覚えるかしないと頭に入って来ませんでした。

実際の教則本の英語がどんな物か分からないかも知れないので、実例でもちょっと見ておきましょうか。
It has been my experience that the best way to thoroughly absorb the SOUND and FEEL of ANY voicing is to play it in the right hand with the left hand playing the root tone an octave or two lower than the right hand voicing.
(Jamey Aebersold Vol.3 The II-V-I progressionの81ページから)

手元にある教則から長めの一文を抜き出してみました。ざっと目を通してみると単語自体でそんな難しい物は無いと思うんですが、どうでしょうか。
構文さえ分かれば後は何も難しい事はありません。普通の教則本の英文なんてせいぜいこの程度の簡単な物です。
音楽の場合は専門用語はカタカナで直輸入されている場合が多いのでその点でも比較的楽です。
どうでしょうか。意味は明瞭に分かったでしょうか?
参考までに私の拙い翻訳でもつけておきます。「私の経験からすると、どんなボイシングでも音と感触を完全に吸収するのに一番いい方法は、右手のボイシングと一緒に左手で右手のオクターブ下か、2オクターブ下のルートをつけて演奏する事である。」って感じです。

(私のお勧めの文法学習書については教則マニアの部屋 > 英語の学習書 にまとめておきました。)

逆さ読み万歳!

さて、とってもイヤな文法さえクリアすれば、教則程度の英文は問題なく読めます。あとは実践あるのみです。
テキスト量が比較的少ないので初めはJamey Aebersoldのマイナスワン教材あたりから入ってみると良いと思います。逆にエンジニアリング系の書籍は結構難しいと思いますので、ちょっと慣れてからの方が良いでしょう。(この系統は日本語ではあまり良い書籍が出てないので、早く読みたいかもしれませんが。)

読み始めてみると初めの2、3冊は結構きついかもしれませんが、まあそこは音楽書籍ですから譜面の占める割合が多いですし、読んでいると使われている単語も似たり寄ったりで、繰り返し同じ単語を見かけるはずです。読み続けていればどんどん楽に読めるようになって来ます。

ですが、この初めの読みづらい状態が一つの壁かもしれません。「やっぱり無理じゃないか」と投げ出してしまってはもったいない。
そこで一つの提案ですが、そのまま読むのがつらかったらさっさと自分で訳文を作ってしまいましょう。
世の中、逆さ読みはよくないから英文は頭から読めとか、スラッシュリーディングでどうたらこうたらとか、言葉の順番が変わってしまう日本語に訳する事に否定的な意見も聞かれますが、そんな事は知った事ではありません。英語の勉強したいから読んでいるんじゃなくて、求める情報があるから英文を読むんです。訳してしまえば後から読み返すのも楽ですし。

そもそも日本語に訳していたらいつまでたっても英語のまま理解出来るようにならないというのは嘘です。
ある一定の量を超えると日本語に訳すプロセスがバイパスされて急に英文をそのまま読めるようになります。
量こなすのがイヤだからあれやこれと抜け道を探したくなる訳ですが、そんな事をしているヒマがあったらどんどん実践していった方が早いです。
まあ、そのまま理解できるようになる時を期待して読んでいると、なかなかその時が来なくってしんどくなってしまうかもしれません。
別に英語習得が目的ではないのでその辺はおまけと考えて放っておいて、どんどん訳文を書いちゃいましょう。

訳文を書く場合は一旦本文をノートなりパソコンのエディタなりに写してから翻訳に入るのがお勧めです。
何でか知りませんが、手を使うと理解が早くなるのと写す時にどれぐらいの分量を一度に写し取れるかが実力判断に使えるからです。
初めは一度に一単語スペルを確認して写していたのが、意味のかたまりごとに一回で写せるようになってきます。

おかしな話ですが、英文を翻訳しながら読んだ情報はしっかり理解して頭に残ります。
日本語で読むと分かったつもりでいい加減に読んでしまって頭に入っていないなんて事がありませんか?(え?私だけ?)
翻訳すると否応なしにじっくり読む事になるので良いのだと思います。
慣れて来て翻訳が必要なくなれば、もちろんそのまま読んでしまってOKですけれども。

リスニングについて

ここまで読みを主眼に置いて書いて来ました。
ですが、教則DVDを見たい場合は聴き取れないとどうしようもありません。
もちろんただの観賞用にするのもありですが、せっかくだから言っている事が分かった方が良いですよね?
一応、リスニングについても触れておきましょう。

まず大切な事ですが、書き言葉で意味が分からない物は何遍聞いたところで意味が分かるようにはなりません。
そういう意味では読める事が大前提なので、とりあえずまだ英文で1冊も本を読んでいない場合は先にスムーズに読めるまで読みましょう。ここからは読めるようになった後の話です。英語の習得が目的ならば別に並行してやるのも良いんですが、実用目的ならある程度スムーズに読めるまでは読むに集中しといた方が良いでしょう。

リスニングのコツは「ひたすら同じものを反復して聞く」です。
初めの方でも書きましたが、私はリスニング先行の妙な勉強を試した経験があります。意味が分かろうが分かるまいがアホみたいに反復していれば聴き取れるようになります。

で、45分とか60分ぐらいの英語のみのCDを200〜300回、ちゃんと何言っているのか集中して聞いていればそれでOKなんですが、そんな苦行をしたいのは英語マニアの人だけだと思われます。手っ取り早くお気に入りアーティストの教則DVDを手に入れて、おしゃべり中心の1チャプターだけひたすらリピートで聞いてみて下さい。そしたら急に聴き取れる瞬間が来ます。なんでかは知りませんが、一人の人の英語に慣れるとその人の英語なら楽に聞きとれるようになります。残りのチャプターも比較的楽に理解出来るようになるでしょう。以上、おしまい。

・・・・ではあんまりなので、ちょっとだけ言っておくと、発音の勉強を少ししてから聞くと繰り返し回数が大分おさえられるかもしれません。全部の音なんてやってらんねーという場合は、無声子音だけでも集中的にやって下さい。それだけでもかなり効果があると思います。

あとはあまり喋りがハイスピードだったりするとしんどいので、喋り倒すDVDを初めに使うのはあまりお勧めしません。聴き取れるまで時間がかかり過ぎると思いますので。ベースの方には残念なお知らせですが、ジャコ・パストリアスの教則とかウダウダ早口で非常にしんどいと思われます。あとは黒人なまりとかフランスなまりはしんどいのでその辺も避けておいた方が良いかもしれません。

最後に

以上で終わりです。あとは実際に読んだり聞いたりして楽しんで下さい。
もし英語を本格的にマスターしたいならば、この後はひたすら反復の訓練が待っています。一つの文章を百回音読とか、500文暗唱とかそんな奴です。その辺は専門の書籍やらサイトやらにお任せしておきましょう。明確な使い道があって実際に使っていると、言葉というのは意外と使いこなせるようになってくるものです。だから英語の達人になりたいのでもなければ、気楽に読みたいものを読み、聞きたいものを聞くでいいんじゃないかと私は思うんですがどうでしょうか?

それにしてもいつもの十割増しで長文になってしまいまして、大変失礼しました・・・・。
今まで、英語教則の紹介はDVDのみに控えていたんですが、今後は教則本も追加しちゃおうかなと思っています。このページは一応の免罪符みたいなものです。(笑