採譜のススメ(1)

相対音感の独習にあたって最大の問題は聴音の練習が一人では難しいという事です。聴音の教材というものもいくつかあるのですが、問題数が100程度ではなかなか身に付きません。(もちろん補助教材としてよくできているので、効果はあります。質その物を否定している訳ではありません。)

それではどうやって聴き取りできるようになるんだという事になる訳ですが、 別に教材を使わなくてもいきなりその辺の曲を採譜してしまえば聴音のトレーニングになります。段階的にトレーニングできないという難点はありますが、好きな曲を使った方が楽しいし、自分のパートを採譜して練習に活かすというのも有りですから、いい面も多々あります。

このページをご覧になられている方の中にも「耳コピの経験はあるよ」という方は結構いらっしゃると思いますが、一応ポップスの楽曲を全パート採譜する方向で耳コピのコツみたいなものを紹介しておきたいと思います。

DAWソフトを活用する

まず採譜するにあたって、耳コピする曲を再生するのは当然なのですが、普通にCDやらで再生するよりかはDAWソフトに取り込んでから作業をスタートする事をお勧めします。

DAWソフトを使用する利点は色々ありますが、手短にいくつか挙げると・・・

1. 小節単位での巻き戻し、ループが可能である
2. プラグインエフェクトで聴き取りにくいパートを聴きやすくできる
3. どんな楽器でも音源があればすぐに音が正しいか確認できる

と言った点が挙げられるかと思います。
どう考えてもDAWソフトを使った方が効率が良いので、お持ちの方は取り込んでから作業をスタートして下さい。

ベースを採譜する

ここからは実際の採譜の話に入ります。

採譜にあたってどのパートから採れば良いのかという事ですが、まずはドラムかベースから採る事になるかと思います。ドラムに関しては音感とはちょっと話が違って来るので、とりあえずここでは割愛しておきます。という事で、まずはベースですね。

ベースを最初に採譜する理由は、当然ながらコードがベースが何の音であるかで決まって来る場合がほとんどだからです。ウワモノに関してはコードがある程度限定できている方がミスが少なくて済みます。ベースが入っていない楽曲でも最低音を奏でているパートから採譜していくのが定石です。

ベースラインは慣れないうちはなかなか聴き取りが困難かもしれません。
聴き取りが困難な理由は、非常に低音なために音程感が掴みにくい、低音は他のパートに埋もれていて分離して聴きづらいといったところだと思います。

こういう場合、DAWソフトを使用しているならばピッチシフターを活用して下さい。
ピッチシフターで1オクターブ上げてしまえば、一気に聴き取りは容易になります。設定を一応書いておくと、パラメータがsemi toneならば12、centsならば1200に設定して下さい。念のため言っておきますが、音が全部上がりますのであまり耳に優しい音ではないので音量を小さめにして作業するようにしましょう。フィルターなりで高音域を削ってしまうのもありです。くれぐれも無茶をしないよう、ご利用は自己責任でお願い致します・・・。

コードを特定する

さて、ベースラインを採り終わったらコード進行を採ります。

コードに関しては大抵はベースの頭の音が最低音である事が多いです。採譜にあたってはベースラインを見ながら作業するのが効率的です。慣れてくればなんとなく最高音を意識していればコードが何なのか分かる場合が多いのですが、初めのうちは3度がメジャーなのかマイナーなのかsus4なのか、5度は完全五度なのかそれ以外なのか、トライアドなのか四和音なのかと、音を鳴らしながら段階的にチェックしていきましょう。

sus4、diminishとマイナー7th(b5th)に関しては音がかなり特徴的で掴みやすいので、出現した際にはよく記憶しておくと良いと思います。

ウワモノを採譜する

コードを採り終わったらいよいよ個別パートの採譜です。これに関しては楽器ごとの特徴等も絡んで来るので採譜のススメ(2)で細かい事を書きたいと思います。

とりあえず全体的に言える事は最低音/最高音→内声という順番で採っていくのが通常です。単音の場合はそんな事は気にする必要無いですけれども。

ボーカルを採譜する

インストだったら関係ありませんが、ボーカルがある曲では当然採譜する必要があります。実は順番的にどの段階でも構わないのですが、一応ここでは最後に書かせて頂きました。

身も蓋もない話ですが、歌手が音痴だと意外と手こずる and 場合によっては気持ち悪くなります・・・orz
誰がとかは間違っても聞かないで下さい・・・。

トレーニングとしての採譜

以上、大まかな採譜の仕方について紹介させて頂きましたが、トレーニングとして考えた場合、必ずしも全パートをこなす必要はないと思います。和音が厳しければまずはボーカル(主旋律)とベースだけ集中的に沢山採譜してみるとか、好きなように採譜していけば良いのではないでしょうか。ただ、ベースだけはある程度楽に採譜できるようになるまでは毎回採るようにした方が良いんじゃないかなと思います。

採譜した楽曲に関してはできれば楽典的に分析して、面白いなとか耳に残るなというところを、データとしてストックしていって下さい。ストックしたデータは他の楽曲を採譜する時に役に立ちますので。