相対音感とスケール練習〜マイナースケール編

メジャースケールに続いてマイナースケールに関しても見ていきましょう。

一応、メジャースケール編を踏まえた上で話を進めていきたいと思うので、読んでいない方はそちらから見て下さい。
マイナースケール編では3種類のスケール(ナチュラルマイナー/ハーモニックマイナー/メロディックマイナー)を扱いますが、メジャースケールをマスターした状態からならば大分楽に習得できるのではないかと思います。

ナチュラルマイナースケール

まずは基本のナチュラルマイナーからスタートしたいと思います。
言わずと知れた事ですが、ナチュラルマイナーはメジャースケールの6番目の音(ラ)からスタートすればナチュラルマイナーそのものですよね?

移動ドの主音をラとするならばもう完成している訳です。主音をドにするならばまた別途練習が必要ですが、その場合はメジャースケールから3度/6度/7度を半音低くした音階と捉える形でスタートした方が良いでしょう。メジャースケールと比較する考え方はそれはそれで良い練習になると思いますが、ここでは主音はラという事で話を進めていきたいと思います。

メジャースケールが弾ければ自動的にマスター出来ているナチュラルマイナーですが、他の2つのマイナースケールはこれを土台にしてマスターしていきます。そのために一つ注意が必要な点があります。それは移動ドでスケールを把握する際に一般的に「シ」と呼ばれる音についてです。通常、「シ」とはメジャースケールの7番目の音、マイナースケールの2番目の音という事になります。習慣で慣れてしまっているかとは思うのですが、できればこれを「ティ(Ti)」と呼ぶように改めて下さい。

何故かというと「ソ」の半音上、ハーモニックマイナー/メロディックマイナーの7番目の音が通常「シ(Si)」と呼ばれるためです。別に両方とも「シ」と呼んでしまっても慣れて来ると弁別できてしまうのが人間の凄いところですが、同じ名前の物が2つあるのはややこしくて混乱の原因になります。特にハーモニックマイナー/メロディックマイナーの導音とメジャースケールの導音同士なので、余計にややこしいのです。それならば今まで「シ」と呼んでいた物を「ティ」と呼んでしまった方がずっと楽です。とりあえず両方とも「シ」と呼んでしまっても良いですが、このページでは解説の都合上次のルールに従って書こうと思います。

1 マイナースケールの2番目の音は「ティ(Ti)」である。
2 ハーモニックマイナー/メロディックマイナーの7番目の音は「シ(Si)」である。

さて、これでとりあえずはナチュラルマイナー自体は大丈夫なのですが、主音ラで練習を進める場合は一点だけ問題が残っています。それはスケール内の何番目の音なのかが移動ドの名前からぱっと出て来にくいという事です。これは楽器で練習する必要はないのですが、移動ドからスケールの何番目の音なのかはパッと条件反射的に出て来るようにして置いた方が良いです。基準はI m7の音を覚える事からスタートするのが効率が良いかと思います。

I m7=ラ(1)・ド(3)・ミ(5)・ソ(7)です。

これは次に進む前にしっかりと頭に入れておいて下さい。

ハーモニックマイナースケール

ナチュラルマイナースケールがマスターできたら次はハーモニックマイナースケールです。ここで大事な事はナチュラルマイナースケールを土台にしてハーモニックマイナースケールを覚えるという事です。楽器ごとの指使いとかは弾きこんで覚える必要があります。それはそれで各自練習して下さい。音の把握という面ではあくまでナチュラルマイナーから変化する形で覚える意識を持って臨んだ方が良いと思うので、ここではそちらに的を絞って話を進めます。

ハーモニックマイナースケールはナチュラルマイナースケールの7番目の音が半音上がったスケールです。移動ドでスケールを下から読んでいくとラティドレミファシとなります。

移動ドでの読み方は呪文のように唱えて覚えてしまって下さい。これは視唱の練習の予備練習としても非常に有効です。さらに楽器で音を確認して歌えるようにするとさらに良いと思います。楽器練習はそれからで結構です。メジャースケール=ナチュラルマイナースケールの音と違うのは「シ」のところだけですから楽器で練習するときはそこだけ意識していけば良いはずです。マイナースケールのルートの半音下ですからここまでの物より覚えやすいですよね?

メロディックマイナースケール

ハーモニックマイナーも仕上がったら次はメロディックマイナースケールです。ここで注意が一点。メロディックマイナースケールは、上昇がいわゆるメロディックマイナーの音の並びで下降はナチュラルマイナー。理論書等でこんな説明を読んだ事がある方もいらっしゃるかと思います。ですが、ここではそれはどっかにうっちゃっておきましょう。上昇/下降共にいわゆるメロディックマイナースケールの音の並びのままで考えてしまって結構です。(これをジャズマイナースケールなんて書いてある本も洋物の中にはありますが。)

さて、メロディックマイナーを最後に持って来たのはハーモニックマイナーから変化と考えた方が音を把握するのが楽だからです。ハーモニックマイナースケールの6番目の音を半音上にするとメロディックマイナーです。6番目の音というと「ファ」ですね。「ファ」の半音上はここでは「フィ(fi)」という事にしておきます。そうするとメロディックマイナースケールはラティドレミフィシですね。 ハーモニックマイナー同様、しっくり来るまで唱えて覚えてみて下さい。

マイナースケールの完成

さて、以上でマイナー3種類マスターです。フィジカルな練習方法は特にメジャースケールと変わる訳でもないので、もし必要ならメジャースケール編のEx.1〜3を応用してみて下さい。完成の基準もメジャースケールと特に変わらないのですが、とりあえずはハーモニックマイナーとメロディックマイナーの移動ド読みは馴染みが薄いかと思いますので、これを優先的に仕上げる事になるのではないでしょうか。