一人で出来る相対音感トレーニング
このページでは実際に独学で相対音感を習得するためのトレーニングを紹介して行きたいと思います。
音感のトレーニングというと、まずは聴音がすぐに思いつくかと思います。
このサイトの音感トレーナーでその初歩的なトレーニングはできるようになっています。単音で正確に正解が出せるようにしてから旋律の聴き取り(これを旋律聴音と言います。)に進むというのが一般的な音感のトレーニングです。しかし、ここで独学者にとっては大きな問題がでてきます。
独学で旋律聴音のトレーニングをするためには音声付きの教材を用いる事になります。
こういう教材というのはごく少数しか無いので、あるレベルの課題を集中的にやっているとあっという間に底をついてしまいます。聴音の教材は繰り返しやっていると答えを覚えてしまいます。答えを覚えてしまっては音感のトレーニングにならないですよね。
そこで、当サイトでは視唱をトレーニングの主眼に置き、聴音教材は音感の習得度合いを確認するのに使用するという方法をお勧めします。
以下、私の経験を踏まえて視唱メインでの練習方法を紹介していきたいと思います。この内容通りにすれば100%相対音感がマスターできると断言出来る訳ではありませんが、確実にレベルアップは図れると思います。
視唱の前の予備練習
まずは最低限の相対音感の感覚が掴めないとハードルが高過ぎるので、全くの初心者は相対音感トレーナーのビギナー版で100問中90問以上正解できる程度までは練習しておいてください。もちろん、視唱の練習と並行してトレーニングする時間があるなら、同時進行で構いません。
現時点での音感が十分でない場合はダイアトニックスケールの上下行、2音間の音程を歌う等のもっと基礎的な練習が必要かもしれません。自信がない方は予備練習として初心者のための相対音感トレーニングで簡単なトレーニングをしてみて下さい。
視唱の練習の仕方
さて、ここからは実際に視唱でのトレーニングの仕方を紹介したいと思います。
トレーニングの仕方は至ってシンプルなものです。
楽譜を用意して、移動ドの名称でメロディーを歌っていくだけです。
大事な事は教材の選び方です。
いきなり転調だらけとか、ダイアトニック以外のコードが出て来るような楽譜で練習してもあまり身になりません。クラシック畑の視唱用テキストを使用していく事になります。
テキストの選択にあたっては旋律の譜面のみのものではなく、範唱や伴奏が用意されているものを選んで下さい。バック無しで旋律の譜面だけというのはなかなか調性を感じながら歌うのが厳しいように思います。
キーを移動しながら繰り返す
練習にあたっては、キーをどんどん変えながら同レベルの課題を繰り返し歌っていく形で進めるのが良いと思います。また、相対音感の練習をしているのだという事を常に意識してください。言葉で言うと、わかりにくいのですが移動ド唱法でのドレミ・・・のカラーを意識するという事です。ただ歌えるだけではなく、各音の感覚をつかむ必要があるので相当の繰り返しが必要です。
こういうものはどこで完成なのか目標設定が非常に難しいですが、私自身は練習回数を一つの目安にしました。
使用した教材はイヤートレーニング関連の教則本でも紹介させて頂いている、「視唱の練習〜和音感の育成をかねて 」〔音楽の友社〕です。
まず、練習の仕方が書いてありますのでそちらに従って下さい。和音の練習です。ピアノ奏者でなくても必ず自分でキーボードを弾く事をお勧めします。(私は勧めませんがどうしても嫌なら打ち込みましょう。ギターならばカポを使って代用できない事もないですが、チューニングの正確さには細心の注意を払ってください。)鍵盤を弾いた事がなくても、せいぜい3日もあれば十分に出来るようになるはずです。和音の聴き取りは相対音感トレーナー(和音/コード)のダイアトニックでトレーニングする事ができますので、良かったら活用してみてください。
1章あたり100回を目標に繰り返していきました。
初めの1周は1日1つのキーずつ多めの回数(30〜50回)で、2周目以降は徐々に回数を減らして行き、最終的に1つの章通しでやれるようにしました。
1章が終わったら2章に進み、3章以降はいくらか回数を減らして10章まで。11章以降は有用だと思いつつも、手を付けていません。
回数はもっと少なくてもOKかもしれないし、もっと多くやらなくてはいけないかもしれません。 これは個人のそれまでに身につけていたスキルに左右される部分が大きいので、各自判断頂くしか無いと思います。
リズムに乗って歌う事が困難であれば、初めは音程優先で同じところを繰り返したり、テンポ無視になってしまっても構いません。最終的にリズムに乗って歌えるようになれば良い訳ですから。
特に1周目は移動ドでの読譜に慣れる必要があるので、かなり厳しい練習になります。一回移動ドで読めるようになればそれ以降はなんという事はありませんから、きつくても頑張って下さい。
すでに知っている曲を音感トレーニングに利用する
上のような方法とは別のアプローチとして、すでに知っている曲を移動ドで歌えるようにするのも非常に効果がある方法です。
好きな曲は複雑過ぎてどう歌ってよいか分からないという方は別に童謡とかでもいいと思います。シンプルなものの方が音感を身につける上では都合が良いかもしれません。
音痴だから視唱なんて無理?
おそらくここまで読んできて、「私は音痴だから無理・・・。」という人がいるかもしれません。
ちょっと待って聞いてください。
自分で歌っていて音痴だと感じるのだったら、それはただ喉の筋肉がコントロールできていないだけです。視唱の練習を通して筋肉のコントロールは改善すしますし、音感トレーニングに支障はありません。
音感トレーニングには鍵盤を
しつこいようですが、トレーニングにあたっては鍵盤楽器を使用する事をお勧めします。
私自身ギターがメインなので、自分の好きな楽器でやれば良いと言いたいところなのですが、どう考えてもキーボードを使った方が良いです。楽典や音感の習得をするのに鍵盤を避けるのは、スキー場でリフトに乗らずに斜面を歩いて登るぐらい効率が悪いです。
無理にとは言いませんが、できるだけ鍵盤楽器を使用した方が良いでしょう。
相対音感修得度のチェック
さて、ここまでで音感のトレーニング法についての話は終わりです。
話としてはなんだかあっさりと終わってしまいましたが、実際に習得するまでの道のりは非常に長い物になるでしょう。モチベーションの維持が一番の難題です。
モチベーションの維持には結果が出ているのを感じるのが一番です。
ですが、いきなり音楽が全て移動ドのドレミファソラシドで聞こえて来たりする訳ではありません。(中にはそういう人もいるかもしれませんが・・・。)
そこで最後に音感の修得度をチェックする方法について語っておきたいと思います。
方法は大した物ではないのですが・・・
(1)聴音用の教材をテスト代わりに使用する
トレーニング的には分量に難のある聴音の教材ですが、カリキュラムは順次レベルアップするように構成されています。音感のテストとして使用するには最適です。是非活用してみて下さい。
(2)単旋律での採譜でタイムを測ってみる
採譜の仕方については採譜のススメ(1)をご覧下さい。和音に関しては一発で分かるようになるのは旋律がある程度採れるようになってからでしょうから、とりあえず脇に置いておきましょう。別に楽器やシンセ音源で音を確認しながらで結構ですので、3曲程度ベースとメロディーを採譜し、タイムを計測してみましょう。ある程度音感が付いて来るとドレミで聞こえる前の段階でも何だか知らないけど、音を掴むのが非常に速くなっているはずです。
この他に、スケールをシンプルに上昇(もしくは下降)するようなフレーズを意識せずに耳にした時にふと移動ドで何の音か分かる時があったり、音楽を聴いている時に長い音が「これはミだな」なんていう風に不思議に確信を持って分かったりする瞬間が訪れるはずです。そんな時はあっさりとスルーせずにその感覚をよく反芻するようにして下さい。