相対音感とスケール練習〜メジャースケール編

このページは基本的に音感のトレーニングが話題の中心なのであまり細々とした 楽器ごとの話は取り上げていないのですが、せっかく相対音感を身につけても それが演奏と結びつかないのではもったいないですね。そのために役に立つのが スケール練習です。

楽器はそれぞれ構造が違う物なのでまとめて話をするのは難しい部分もありますが、 このページでは共通で使える、音感と楽器を結びつける練習方法について触れておきます。

スケール練習はただの指の運動ではない

皆さんはスケール練習はしていますか?
スケール練習というと、ただの指の運動になってしまっている事も多くて役に立たないという印象を持っている方もいらっしゃると思います。でも、ひたすらメトロノームのテンポを上げながらどんどんスピードをあげるのだけがスケール練習ではありません。

スケール練習のもう一つの重要な側面は楽器上で音の並びを構造的に把握する事です。楽器毎に構造の捉え方は変わって来るかもしれませんが、スケール練習がそのための重要な練習である事はどの楽器でも変わらないと思います。

では、何をどのように練習していけば良いのか?
ここを考えてみましょう。

重要なスケールは3種類

スケールというと際限なく色々な種類があるような気もしますが、ジャンルに関係なく重要なスケールの数は意外と数が限られているものです。イレギュラーな物は重要な物を把握しておけば結構対応できるものです。

先に言ってしまうとメジャースケール、ハーモニックマイナースケール、メロディックマイナースケールの3種類です。(これ以外にペンタトニックも重要ですが、イレギュラーな部分が多過ぎて話題が脱線しそうなのでここでは除外しておきます。)

本で奏法解説とか読んでいたらそれ以外に一杯スケールが出て来るぞという方もいらっしゃるでしょう。一応、理由も触れておいた方が良いかもしれないですね。

まずロック系から。まずドリアン、リディアン、ミクソリディアン。よく耳にするスケール名だと思います。全て音の並びはメジャースケールと一緒です。Dドリアン,Fリディアン,Gミクソリディアン=Cメジャースケールな訳です。違うのはバックのコード感です。 試しに|Dm7 |G7 | の繰り返しの上でCメジャースケールを弾いてみればそれでドリアンになってしまいますね?(音源準備中・・・)

次にジャズ系。こちらの方面の方にはおそらくそんな事今さら解説されるまでもないと言われてしまいそうですが・・・。ナチュラルテンションの7thコードでよく使用されるリディアン♭7はメロデイックマイナーと同じ並びです。オルタードテンションの7thコードでよく使うオルタードもメロディックマイナーと同じ並び。とりあえずホールトーンとかコンディミはこの法則からはずれてしまいますが、かなりの部分は3つのスケールに集約している訳です。

メジャースケールを12keyで把握する

さて、このように3つのスケールをしっかり把握すれば結果として音感と楽器が結びつくわ、コード進行がちょっと分析できれば弾く音が見えて来るわでウハウハな訳ですが、いきなり全部把握するとなるとこれがなかなか大変です。ここからは簡単に練習のガイドラインのような話をしておきましょう。

まずはメジャースケール。これを12個しっかり把握する事が全てのスタートです。
マイナーについてはこれを基準にしてマスターした方が効率が良いので、とりあえずほっときましょう。 メジャースケールはお馴染みのドレミファソラシドですが、できればドレミファソラティドにしておいた方が何かと都合が良いです。 一応、この点だけ頭の片隅に置いておいて下さい。それでは実際のスケール練習に進みましょう。

で、早速メジャースケールの練習な訳ですが、ここで重要なのはバリバリ速弾きとかではなく音程の把握です。ある程度移動ド/実音(ポップスの場合は固定ドよりCとかDとかアルファベットの音名の方が都合が良いでしょう。)とスケールが結びついていないと練習の効果も半減です。一度に全ての音が把握できるならそれで良いのですが、うまく把握できない場合のコツを一点挙げておきましょう。(以下、全ての楽器に有効と言いたいところですが、視覚的に把握が容易な弦楽器/鍵盤楽器以外ではちょっと有効か自信がない部分もあります。ご容赦下さい。)

まずはド/ソ/ド(オクターブ上)の3点を意識してみましょう。余裕が出て来たらミも意識してみます。言い換えるとスケールを弾きながらその中のパワーコードのフォーム、余裕があったらトライアドのフォームを意識ながら練習するという事ですね。骨組みが見えて来ると残りの音は芋づる式に把握できて来ます。最終的には全部の音を移動ドで意識しながら弾けるようにします。

これは単純に意識の仕方を変えるだけの話です。集中力さえ維持できればこれが一番効率が良いと思います。でも実際意識しながら弾くだけというのは結構しんどいです。声に出して唱えていくのも一つの方法ですが、ここではもうちょっとエクササイズぽいものも紹介しておきましょう。

Ex.1 移調奏の練習(全ての楽器向け)

移調奏というのは曲のキーを変えて弾く事です。本来のキーとは違うキーで弾けばそれで移調奏な訳です。しかし、移動ド読みと各キーのスケールが把握できるまでは制限無しでは厳しいのでちょっとガイドラインを作ってやってみましょう。まずはkey=Cで臨時記号無しの簡単な楽譜(八分音符と四分音符位しか出てこない位の方が良いかも。)を使って、他のキーで弾く練習をしてみて下さい。どんな楽譜を使っていいのか分からない場合は、ピアノの簡単な教則ものの右手パートがお勧めです。バイエルとか価格は安いですし曲も簡単なので非常に都合が良いです。

テンポは演奏可能なスローテンポで構いませんので、メトロノームを使用した方が良いでしょう。もし初見での演奏が厳しいようならオリジナルのキーのまま弾けるようにしてから移調奏に進んでみて下さい。余裕があり過ぎるようならばKey=C以外の曲でもやってみて下さい。

Ex.2 一本の弦上のスケール音を人差し指で押さえて弾いていく(弦楽器向け)

弦楽器の場合、スケールはポジションごとの練習がメインになりがちですなのでそこを崩すのが目的です。多分この方法なら強制的に移動ドでの音名を意識せざるおえないはずです。複数の指を使ってもいいのですが、そうするとポジションの意識が強くなりますし、知らず知らずのうちに指の運動に陥ってしまいやすいように思います。そこで敢えて指一本での練習を勧めておきます。

Ex.3 ダイアトニックコードのアルペジオを弾く(全ての楽器向け)

ダイアトニックコードのアルペジオを順番に弾いていくのは移動ドを意識するのには非常に有効です。ただの指の運動になってしまわないように移動ドを意識しながらやるようにしてみて下さい。あまりオクターブ幅を広げずに1〜2オクターブ位の範囲内で反復する方が頭の体操としては有効だと思います。弦楽器の場合はポジションごとでの練習と弦一本での2通りの練習方法があると思うので、色々やってみて下さい。

これに関しては移動ドで各コードの構成音がスラスラ出てこないと厳しいかもしれません。一応、7つのコードそれぞれの構成音を移動ドで書いておきます(一オクターブ上下行)ので、ちゃんと把握できているか確認してみて下さい。(できればシのところはティにしといた方が後述のマイナーとの関連性も考えると都合が良いです。)

I M7 : ドミソシドシソミ
II m7: レファラドレドラファ
III m7: ミソシレミレシソ
IV M7: ファラドミファミドラ
V 7 : ソシレファソファレシ
VI m7: ラドミソラソミド
VII m7(b5): シレファラシラファレ

全然把握できていない場合は先に唱えて覚えてしまった方が効率が良いかもしれません。ここではスケール練習の一部としてやっているので四和音だけにしていますが、実際の演奏ではトライアドの利用頻度も高いのでトライアドはトライアドで別に練習しておくと良いと思います。

メジャースケールの完成

以上でメジャースケールの練習は終わりです。何だか沢山書きましたが、別に全部の練習をこなす必要はないです。ようは移動ドでメジャースケールが把握できていればそれでOKです。

で、どこで完成と考えれば良いかなのですが、これは漠然としていますが特に意識しなくても何となく移動ドと実音が考えなくても把握できるようになっていれば完成です。実際の演奏でまさか頭の中で唱えながらというのは無茶なので、あくまで練習をこなした結果として見えてくればそれでいいんじゃないでしょうか。

次はマイナースケールですが、長くなり過ぎるので相対音感とスケール練習〜マイナースケール編に続きます。