88鍵の電子ピアノ(50000円〜)

やはり88鍵が理想的

キーボードの鍵盤数は色々ありますが、結局、できるだけ88鍵にするべきだと私は思っています。 大は小を兼ねるとか、そんな曖昧な話ではありません。根本的にピアノ曲では88鍵ないと演奏できない曲が沢山あるので、 どうしようもない事なのです。

「別に複雑なクラシック曲を弾く訳でもないのに88鍵もいらないんじゃ・・・」と考える人もいるかもしれませんが、 これは単純なコード弾きでも同様に関わってくる問題です。音というのは低音になるほど音程の間隔を広くとらないと 適正な響きが得られませんから、和音での左手のパートというのはおのずと音域が広くなっていきます。 結果的に、高音の方はそれほどでなくとも低音の方は常に広い音域を使う事が当たり前になってしまいます。 幸い、現在はかなりの低価格から88鍵の楽器がありますから、スペースがあったら迷わず88鍵にしておきましょう。

このページでは88鍵かつピアノタッチ、必要最低限の機能という条件で楽器をチョイスしたいと思います。
念のためですが、ピアノタッチというのはピアノを模した重量感のある弾き心地の鍵盤の事を指します。要するに電子ピアノですね。 ピアノタッチに拘るのは応用範囲の広さからです。キーボードからピアノだと結構対応するのが大変ですが、ピアノからキーボードなら 普段から重いキーで指が鍛えられているので比較的対応が容易です。それに電子ピアノでも適正な音量で弾いていれば、ある程度生ピアノでも 弾けるという事もあります。

据え置き型か可搬型か

鍵盤数が多くなると当然の事ながら筐体も大きくなる訳でして、88鍵の製品は『キーボード』というよりは『ピアノ』という 意識で作られている物が多いです。結果的にペダルも一体の据え置き型と、あくまでキーボード的な作りの可搬型の物があります。 これはどちらが良いか迷うかもしれません。

これは持ち運びするかどうかがポイントで、もし頻繁に持ち出すならキーボードっぽい物にした方が便利なのは当たり前ですね。 しかし、キーボード型の物でもある程度ハイエンドになると相当の重量がありますから、一人で持ち運ぶのは困難です。 基本的に5,6万円ぐらいの廉価モデルに関しては持ち運びを考えても良いと思いますが、それ以外は基本持ち運びは考えない方が 賢明でしょう。(本職の鍵盤奏者の人はやむなく運ぶかもしれませんが、一応このページは別の非鍵盤奏者を想定して書いているので、 そこのところはご了承を。)

さて、結論としてはどういう事かというと、低価格の物の場合はキーボード型の方がいいかもしれませんね。 ただ、このクラスの製品はそもそもキーボード型が中心で据え置き型は少ないです。 ハイエンドに関しては基本どちらでもOK。ピアノの代用品という点に強い拘りがある場合は据え置き型が良いかもしれません。

余計な機能は要りません

各メーカーの電子ピアノのラインナップを見ると、やたらと沢山機種があって、何を基準に選べば良いのか迷ってしまう方もいるのでは ないかと思います。様々な機能があって一見どれも魅力的に映るかもしれませんが、実際に検討する必要がある項目は限られた物です。 例えば、レッスン機能とか、データカードだとか、そんな物は正直必要ありません。中途半端に音色の多い音源部分も必要ありません。 もちろんピアノの音源は内蔵じゃないと不便ですが、それ以外は中途半端な出来の音色があっても仕方ありません。多様な音色に拘るなら、 ピアノタッチのシンセ(Tritonとか。大体20万から30万円ぐらいの物が中心。)を選択した方が良いです。

拘りたいのは以下の点だけです。
同時発音数、ペダル、ピッチベンドホイール、MIDI出力、スピーカー。
以上、5点をメインに検討して、その他はおまけと考えてしまって良いと思います。

スペックを読む上で基本的に大事な事は、どんな風な演奏をするかです。
まあ、基本初心者向きで書いているこのページですが、本格的なクラシックも弾いてみたいのか、あくまで和音の演奏やDTMなんかで ある程度弾けるようになるだけで十分なのかをまずは考えてみて下さい。以下、この2つを本格志向とライト志向と呼ぶ事にします。 音自体に関してはこれ以外にサンプリングの仕様も大事なんですが、どちらかというと個別の機種を紹介した方が分かりやすいので、 これについては後述します。

本格志向ならば、同時発音数は128以上、ペダルは3種類必要です。
ライト志向ならば同時発音数は64以上、ペダルはサステインだけあればそれほど問題はないはずです。

ベンドホイール、MIDI出力に関してはDTMで使用するならば欲しいところ。しかし、残念ながら電子ピアノを意識した製品でコストパフォーマンスが 良い製品にはMIDI入出力は付いていても、ベンドホイールは付いていない事が多い傾向にあります。 20万円以上のハイエンド機種ならばベンドホイールも付いていますが、10万円ぐらいの予算で考えているならば、ピアノはピアノ単体、MIDIコントローラーは 別に小型キーボ−ドを用意という形を採った方が都合が良いかもしれません。

スピーカーはできれば内蔵されているタイプがお勧めです。DTM中心で考えている場合は外部のスピーカーから音を出すのもありですが、 ちょっと想像してみて下さい。少しピアノが弾きたくなったので、パソコンの電源を押して起動するのを待つ。意外とうっとおしくないですか? 私はスピーカー内蔵にしておいた方がいいんじゃないかと思いますが、いかがでしょうか?

ヤマハのグレードハンマー鍵盤に勝るもの無し

ピアノタッチの場合は鍵盤の感触が非常に重要な要素になります。 この鍵盤の感触という一点に置いては、私はヤマハのグレードハンマーに勝る物はないと思っています。 まあ、主観なんで異論がある人もいるかもしれませんが、実際に各社の鍵盤タッチを比較した事がある人の かなり多くが同意してくれるんじゃないでしょうか。(究極を言うとDGPとかDUPが究極の再現度ですが、 最低でも40万円以上するような物をこのページで扱っても仕方ないので、それは除外します。) ですので、ある程度の予算(9万円〜)があるならばヤマハ製の一択ではないかと思います。

予算的に9万円が苦しければ5万円ぐらいでも最近は電子ピアノがあります。この場合はヤマハに比べると一気にグレードダウンしてしまいますが、 一昔前の全然ピアノじゃない製品に比べればかなり頑張っている製品もあります。廉価製品で強いメーカーとしてはカシオですね。

予算9万円〜

さて、前置きが長くなってしまいましたが、ここからは実際の機種を見てみたいと思います。

まずは9万円以上。なんでこんな中途半端な価格で切っているのかと言うと、それはYamahaのARIUS(アリウス)シリーズとPシリーズが価格に対して画期的なハイエンド仕様であるため、 そこに基準を合わしたからです。ちなみにアリウスは据え置き型でPシリーズはキーボード型です。費用対効果で考えると明らかにこの2つが ベストです(より上の性能が明らかに分かるのは20万円以上です。)ので、そこに話を絞って進めていきたいと思います。

まずはアリウスの方から。
具体的な機種で言うとYDP-160、その後継のYDP-161です。
鍵盤がグレードハンマー、音源が3レベルAWMダイナミックステレオサンプリングです。

次にPシリーズ。
こちらについてはP-155が注目すべき機種です。
鍵盤がグレードハンマー、音源が4レベルAWMダイナミックステレオサンプリングです。

いきなりいかつい仕様の話になって混乱するかもしれませんね。鍵盤のグレードハンマーは前項で書いているので、ここでは音源について触れておきましょう。 電子ピアノの音はどのような仕組みなのかと言うと、実際のグランドピアノの音を録音して、それがキーを押すと鳴るようになっています。この音を録る事を サンプリングと言います。AWMというのはただのYAMAHAの仕様の話なのでスルーしてOK。

さて、ピアノの場合は音の強弱がありますから、当然強く弾けば強い音、弱く弾けば弱い音が鳴ります。この点を再現するにあたって、比較的安価な製品では サンプリングされた一つの音を大きくしたり小さくしたりして対応する事になります。しかし、実際のアコースティックな楽器というのは強く弾いた時と弱く弾いた時では 音量だけでなく、音質も変化するはずです。この音質の変化を再現するためには1つの音に対して、複数の強さのサンプル音を用意する事になります。これが 先ほど紹介した音源の名前に付いている、3レベルとか4レベルの意味です。つまり3レベルなら強弱に合わせて3つの音、4レベルなら強弱に合わせて4種類の音を 持っているという事です。

従来のヤマハの製品の場合、低価格のモデルはAWMダイナミックステレオサンプリング(つまり1つしかサンプル音がない音源)でした。 3レベルとかそういうのはもっと上位クラス、具体的に言うと15万円ぐらいの製品にしか実装されいなかったのが、ここ数年に出たこの3つの機種に関しては 覆されています。YDP-160はもう販売完了のようなので、現行機種としてYDP-161とP-155。この2つがこの価格帯でのお勧めですね。

YDP-161とP-155のコストパフォーマンスは特筆すべき物だと思いますが、唯一の難点はベンドホイールが付いていない事。MIDIコントローラーとして使う事を 考えると難点なのですが、もしベンドホイール等の充実を考えるとCPシリーズとかSシリーズなので最低でもCP33ですね。この機種も安いですがグレードハンマー対応です。 定価がちょっと高いですが販売価格は10万ぐらいなので(スタンド等オプションを考えると11万ぐらい?)、DTM中心で考える場合はこちらの方が良いでしょう。

最後にYDP-161とP-155自体を比較した話をしておきます。コストパフォーマンスを考えると、据え置き型でOKならYDP-161の方が実は安く済むんじゃないかと思います。 何故かと言うと、本体だけならP-155の方が微妙に安いですが、ペダルやらスタンドやら購入してしまうと金額が逆転してしまうからです。純正のスタンド、椅子、ペダル等を 一緒に買った場合は10万円超になってしまいます。(椅子はともかく、スタンドは電子ピアノの場合は純正にしておいた方が安定性があって無難です。) P-155の方が発売日が新しいため音源が新しい4レベルサンプリングなのは惹かれる点ではありますが、予算を抑える事を優先するならYDP-161なんじゃないでしょうか。

予算〜6万円

ここからは上で紹介した価格帯よりもグッと下がった6万円以下の物を中心に話をしたいと思います。この価格帯は10年ぐらい前では電子ピアノでは考えられない値段でしたが、 カシオのPriviaの発売辺りを期に一気に増えた感があります。正直言って、上で紹介した機種に比べると大分性能は落ちてしまいますが、こんな値段で気軽にピアノが手に入るというのは ありがたい事です。5万円以下としたのは、この値段より上で9万円以下という価格帯は基本的に5万円以下の機種にオプション機能を追加したような機種がメインだからです。 ベンドホイールの有無の問題があるので、若干中間の価格帯の機種の話を交えつつ見ていきたいと思います。

まあ、とにかくこの価格帯はPriviaに尽きます。このシリーズはとにかく安いのが特徴です。廉価モデルだと定価は6万円以上ですが、実際の販売価格は4〜5万円程度の事も多いです。 これに椅子等必要な物を加えて大体5〜6万円。過剰な期待は禁物ですが価格から考えれば十分納得がいくレベルのタッチと音もあるので、当面の練習用として十分に役に立つはずです。

据え置き型のPX-730とキーボード型のPX-130が候補ですね。
PX-130はスタンド等のオプションも入れると販売価格がPX730とほとんど同じになってしまいます。 据え置き型のスタンドではなく安めのスタンドと三本のペダルではなくサステイン用の一本のペダルにすれば、大分安く済むし、持ち運びにも便利です。 ちなみにこのクラスの物は比較的に重量も軽めなので、持ち運びも現実的(PX-130本体は11.2kg。)です。 あくまで据え置きメインで考えるならPX-730にした方が良いと思います。

このクラスでも基本的にはベンドホイールは付いていません。ですが、上位価格帯と違って比較的近い価格でホイール付きのモデルがあるので選択肢として紹介しておきます。 PX-330ですね。定価は9万超で一瞬尻込みしてしまいますが、実際の販売価格は大体5〜6万円ぐらいです。シーケンサーとしての機能が充実しているので音色等も多く、 PX-130やPX-730とは若干毛色が違う製品ですが、ピアノとしての仕様(鍵盤、ピアノの音色)は同じです。DTMのマスターキーボードとしての使用も考えるならばこちらに しておいた方が良いでしょう。